みなさん、こんにちは!
2025年12月9日に公正取引委員会(公取委)が、大手ライバー事務所4社に対して独占禁止法違反の恐れがあるとして注意を行ったというニュースをご存じでしょうか?
ライバー(配信者)の移籍や独立を不当に縛る「契約内容」が問題視されました。
これまで芸能界でも度々問題となってきた「契約終了後の活動制限」という商慣習に、新しいエンタメ市場である「ライバー業界」でもメスが入った形です。
1. ニュースの概要:何が起きたのか?
公取委は、所属ライバーとの契約において「契約終了後に、他事務所への移籍や独立、配信活動そのものを一定期間禁止する」という条項を設けていた大手4社に対し、改善を求める注意を行いました。
注意を受けた4社
いずれも、DeNAが運営する大手ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」などで活動するライバーを多数抱える有力事務所です。
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株式会社321
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株式会社AEGIS GROUP(イージスグループ)
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株式会社WASABI
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株式会社Colors
これらの事務所は、ライバーとの契約書に以下のような「縛り」を設けていました。
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- 競業避止義務の拡大解釈: 契約終了後、数ヶ月~1年程度の間、ライブ配信活動自体を禁止する。
- 移籍の禁止: 他の事務所へ移籍して活動を継続することを禁止する。
- 同種事業の禁止: 自分で事務所を立ち上げるなど、競合するビジネスを行うことを禁止する。
2. 公取委が問題視した「2つの論点」
なぜ、これらの契約が「独占禁止法違反」の恐れがあると判断されたのでしょうか。公取委は主に2つの観点から問題視しています。
① 優越的地位の乱用・拘束条件付取引
事務所側は、ライバーに対して契約の主導権を握りやすい立場にあります。 「ノウハウの流出を防ぐ」「引き抜きを防ぐ」という名目で、契約終了後の個人の活動まで縛ることは、「個人の職業選択の自由」や「経済活動の自由」を不当に制限する行為にあたります。
② 競争者に対する取引妨害
有力なライバーが契約終了後も自由に活動できないようにすることは、他の事務所がそのライバーを獲得する機会を奪うことになります。これは、市場における公正な競争を阻害する行為です。
3. 背景にある「芸能界的な慣習」と「新しい働き方」の摩擦
この問題の背景には、従来型の芸能事務所のビジネスモデルと、現代の個人中心の働き方との摩擦があります。
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事務所側の論理: 「育成にコストをかけたのだから、すぐに他社へ移られたり独立されたりしては投資回収ができない」「人気が出たのは事務所のサポートのおかげだ」という主張があります。これに基づき、いわゆる「辞めたら干す(活動させない)」ような契約条項を入れる慣習がありました。
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公取委の判断: 公取委は近年、フリーランスや個人事業主の保護に力を入れています。「人材の囲い込み」による競争制限は、イノベーションを阻害し、働き手の権利を侵害すると判断しました。
特にライバーは、芸能人のようにテレビ局などのメディアに依存せず、スマホ一つで活動できるため、本来は「個人事業主」としての独立性が高いはずです。それにもかかわらず、過度な制限をかけることは不合理であるとみなされました。
4. 今後の業界への影響と予測
今回の注意は、行政処分(排除措置命令など)の一歩手前である「注意」ですが、業界へのインパクトは絶大です。
① 契約書の全面的な見直し
今回名前が挙がった4社だけでなく、ライバー事務所業界全体で契約書の見直しが進むでしょう。「契約終了後の活動禁止期間」の撤廃や、期間の大幅な短縮(本当に秘密保持が必要な最小限の期間のみにするなど)が行われると予想されます。
② 違約金トラブルの減少
これまで、退所しようとするライバーに対し、契約違反として高額な違約金を請求するトラブルが散見されました。今回の公取委の判断により、不当な制限に基づく違約金請求は法的に認められにくくなります。
③ 事務所の「選ばれる努力」の加速
「契約で縛る」ことができなくなる以上、事務所は「この事務所に居続けたい」と思わせるような、実質的なサポートやメリット(案件紹介、税務支援、スタジオ提供など)を強化する必要があります。ライバーにとっては、より良い環境を選びやすくなるでしょう。
5. 【まとめ】ライバー活動中・検討中の方へ
今回のニュースを踏まえ、もしあなたが現在ライバーとして活動している、あるいはこれから始めようとしているなら、以下の点を確認してください。
トラブルを避けるために、以下のポイントを徹底的に確認してください。
もっとも注意すべき点です。契約書に以下の文言がないか探してください。
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「契約終了後、◯ヶ月間はライバー活動をしてはいけない」
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「退所後、他の事務所へ移籍してはいけない」
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「辞めた後、同名のSNSアカウントを使ってはいけない」
対策: 公取委が「問題あり」とした部分です。「活動の自由を不当に制限する条項は削除してほしい」と交渉するか、そのような条項がある事務所は避けるのが賢明です。
退所時に高額請求されるトラブルが多発しています。
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高額な違約金: 「契約期間中に辞めたら◯◯万円支払う」という金額が法外でないか(例えば研修費名目で高額請求されるなど)。
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報酬のピンハネ: 還元率(ロイヤリティ)が明確か。「手数料」などの名目で不明瞭な引かれ方をしていないか。
意外な落とし穴ですが、アカウントの権利関係です。
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アカウント権限: PocochaやTikTokなどの配信アカウントは「個人のもの」か「事務所のもの」か。
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注意: 「事務所の所有物」となっている場合、辞めた瞬間にアカウントごと削除されたり、没収されたりして、積み上げたフォロワーを全て失うリスクがあります。
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